親子で野菜料理をすると何が育つ?自己肯定感・非認知能力につなげる「任せ方」のコツ
親子で野菜料理を作った経験と、子どもの心理的発達スコアの関連を示した調査をもとに、家庭で無理なくできる料理体験の取り入れ方を紹介します。大切なのは「上手に作る」より、子どもに持ち場を与え、選ばせ、感謝を伝えることです。
親子の料理体験は、自己肯定感・非認知能力を育てるきっかけになる?
「子どもの自己肯定感を育てたい」「非認知能力を伸ばしたい」と思っても、毎日の生活の中で何をすればよいのか、迷うことがありますよね。
特別な教材や習い事を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、実は家庭の中にある身近な体験にも、子どもの育ちにつながるヒントがあります。そのひとつとして注目したいのが、親子で一緒に料理をすること。中でも、参考記事で紹介されていた研究では「親子で野菜料理を作った経験」と、子どもの心理的発達スコアとの関連が報告されています。
ただし、最初に大切なことを確認しておきましょう。この研究は「親子で野菜料理をしたから、必ず自己肯定感や非認知能力が高くなる」と証明したものではありません。あくまで、質問紙調査によって見られた関連です。
そのうえで、家庭でできる実践として考えると、料理はとても魅力的な体験です。洗う、ちぎる、混ぜる、並べる、味を見る。子どもが自分の手を動かし、家族の役に立ち、「自分にもできた」と感じやすい場面がたくさんあるからです。
研究でわかったこと:野菜料理を親子で作った家庭に見られた傾向
参考記事で紹介されているのは、キユーピー株式会社と、白百合女子大学名誉教授の田島信元先生が共同で行った研究です。2022年に日本食育学会で発表され、2025年には日本食品科学工学会誌にも論文として掲載されたと紹介されています。
調査の対象は、3歳から12歳までの子どもを第一子に持つ保護者793人。過去1年間の親子料理経験について質問紙で調べ、次の3つのグループに分けて比較しています。
- 野菜料理を親子で一緒に作った経験のあるグループ:420人
- 野菜以外の料理、お菓子作りなどを親子で一緒に作った経験のあるグループ:133人
- 親子で一緒に料理を作った経験がないグループ:240人
その結果、野菜料理を親子で作った経験のあるグループの子どもは、他のグループと比べて、心理的発達スコアの全6項目で有意に高い結果になったとされています。
参考記事内で具体的に挙げられている項目には、次のようなものがあります。
- 自己統制力:自分の感情や行動をコントロールする力
- 論理的・集中的態度:物事を順序立てて考え、集中して取り組む姿勢
どちらも、テストの点数のようにすぐ見える力ではありませんが、日々の生活や学びを支える大切な力です。いわゆる非認知能力と重なる部分があると考えられます。
また、野菜料理を親子で作った経験のあるグループでは、野菜の摂取量も多い傾向があることが紹介されています。
いちばん注目したいのは「子どもに任せているか」
この研究で、家庭での実践に特に生かしやすいポイントがあります。それは、親子で野菜料理を作る家庭の中でも、洗う・ちぎるといった調理工程を子どもに任せている家庭のほうが、親が実施している家庭よりも、子どもの積極的な行動や親子の満足感のスコアが有意に高かったという点です。
ここから考えられる大切な視点は、「親子で料理をすること」そのものに加えて、「子どもが自分の役割を持って参加していること」が大事かもしれない、ということです。
親が全部準備して、子どもは横で少しだけ見ている。もちろんそれも親子の時間として価値があります。でも、自己肯定感や非認知能力につなげたいと考えるなら、子どもが「自分がやった」「家族の役に立った」と感じられる場面をつくることが大切です。
料理は失敗も起こりやすい活動です。水がこぼれる、野菜がうまくちぎれない、時間がかかる。親にとっては少し大変です。それでも、子どもにとっては、自分で考え、手を動かし、最後まで関わる貴重な経験になります。
研究結果をどう受け止める?因果関係はまだ言い切れない
ここで、研究の読み取り方も丁寧に整理しておきます。
今回の調査は、保護者に過去1年間の経験をたずねた質問紙調査です。そのため、「野菜料理を親子でしたことが、子どもの心理的発達を高めた」と断定することはできません。
たとえば、次のような可能性も考えられます。
- もともと親子関係が良好な家庭ほど、一緒に料理をする機会が多い
- 保護者に時間的・精神的な余裕がある家庭ほど、料理体験を取り入れやすい
- 体験を大切にする家庭では、料理以外にもさまざまな関わりをしている
つまり、親子料理そのものだけでなく、「子どもに任せる」「一緒に楽しむ」「家庭の中で役割を持つ」といった関わり方全体が、子どもの育ちと関係している可能性があります。
ですから、この記事でお伝えしたいのは「毎日野菜料理をさせましょう」ということではありません。むしろ、できる範囲でよいので、子どもが家庭の中で役割を持ち、自分の力を発揮できる場面を増やしていきましょう、という提案です。
非認知能力を育てるための料理体験の工夫
非認知能力という言葉には、自己統制力、集中して取り組む姿勢、物事を順序立てて考える力など、さまざまな力が含まれます。参考記事で紹介された研究でも、自己統制力や論理的・集中的態度が具体的に挙げられていました。
料理の時間を、こうした力を育てる体験に近づけるには、次のような工夫ができます。
1. 「お手伝い」ではなく「持ち場」をつくる
「これやって」とその場で頼むだけだと、子どもにとってはお手伝いをさせられている感覚になりやすいかもしれません。
そこで、「レタスをちぎる係」「ミニトマトを洗う係」「お皿を並べる係」のように、子ども専用の持ち場を決めてみます。
持ち場があると、子どもは「これは自分の役割なんだ」と感じやすくなります。毎回完璧にできなくても大丈夫です。自分の担当を持つこと自体が、責任感や主体的に動く経験につながっていきます。
2. 子どもに選ばせる
「今日はこれをやってね」と決めるより、「野菜を洗うのと、お皿を並べるの、どっちがいい?」と選択肢を出してみましょう。
選ぶ経験は、「自分で決めた」という感覚を生みます。自分で選んだことは、最後までやってみようという気持ちにもつながりやすくなります。
選択肢は多すぎなくて構いません。親が安全に見守れる範囲で、2つほど提示するだけでも十分です。
3. 順番を一緒に確認する
料理には手順があります。洗う、ちぎる、入れる、混ぜる、盛りつける。こうした流れは、物事を順序立てて考えるよい練習になります。
「最初に何をするんだっけ?」「次はどれを入れようか」と、答えを急がずに問いかけてみましょう。親が全部指示するのではなく、子どもが少し考える余白を残すことがポイントです。
ただし、うまく答えられなくても責める必要はありません。「じゃあ一緒に見てみよう」と戻れば大丈夫です。
自己肯定感を育てるために大切な声かけ
自己肯定感を育てるうえで、料理体験は「できた」「役に立った」「家族に喜ばれた」を感じやすい場面になります。
そのために意識したいのは、できばえよりも、子どもが関わった事実に目を向けることです。
1. 「上手」より「ありがとう」を伝える
参考記事では、子どもに任せるときのポイントとして、「褒める」より「ありがとう」が紹介されています。
「すごいね、上手にできたね」も嬉しい言葉ですが、料理の場面では「ありがとう、助かったよ」「○○ちゃんが洗ってくれたから、すぐ作れたよ」のように伝えると、子どもは自分が家族の一員として役に立ったことを感じやすくなります。
これは、結果だけを評価するよりも、子どもの参加そのものを認める関わりです。自己肯定感につなげたいときは、「完璧にできたから価値がある」のではなく、「自分が関わったことに意味がある」と感じられることが大切です。
2. 失敗してもいい場所を決める
任せると決めたら、多少の失敗には口を出さない場所をつくることも大切です。
もちろん、危険な作業まで無理に任せる必要はありません。初めてのことは一緒に練習し、子どもができそうな範囲から始めます。そのうえで、野菜をちぎる形がバラバラでも、水が少しこぼれても、「やってみる経験」を守ってあげたいところです。
親にとっては忍耐が必要な場面もあります。でも、すぐに直されない経験は、子どもに「自分でやっていいんだ」という安心感を与えます。
3. 親子の満足感を大切にする
研究では、子どもに調理工程を任せている家庭のほうが、親子の満足感のスコアが高かったことも紹介されています。
料理の目的を「栄養のあるものを作る」だけにすると、忙しい日は負担が大きくなります。けれど、「今日は一緒にレタスをちぎれたね」「トマトを洗ってくれて助かったね」と、小さな達成を味わう時間にできれば、親子にとって温かい体験になります。
忙しい家庭でも始めやすい、野菜料理の関わり方
毎日、親子で料理をする必要はありません。大切なのは、無理なく続けられる形にすることです。
たとえば、次のような小さな関わりから始められます。
- 野菜を洗う
- 葉物野菜をちぎる
- 盛りつける
- お皿を並べる
- 食卓に運ぶ
参考記事で挙げられていた「洗う」「ちぎる」は、子どもに任せやすい工程として取り入れやすいものです。年齢や発達に合わせて、親が安全に見守れる範囲を選びましょう。
うまくいかない日があっても大丈夫です。疲れている日は親が全部やってもいいですし、週末だけ、時間がある日だけでも構いません。「できる範囲で」が長続きのコツです。
まとめ:料理で育てたいのは、完成品より「自分もできる」の感覚
親子で野菜料理を作った経験のある家庭では、子どもの心理的発達スコアが高い傾向が見られたという研究が紹介されています。また、洗う・ちぎるなどの工程を子どもに任せている家庭では、子どもの積極的な行動や親子の満足感のスコアも高かったとされています。
ただし、これは因果関係を証明したものではありません。だからこそ、「野菜料理をすればよい」と単純に考えるのではなく、家庭の中で子どもに役割を渡し、選ばせ、失敗を見守り、感謝を伝えることに目を向けたいところです。
料理は、子どもが家族の一員として参加できる身近な体験です。上手に作ることよりも、「任せてもらえた」「自分でできた」「ありがとうと言ってもらえた」という感覚を大切にしてみてください。
その積み重ねが、自己肯定感や非認知能力を育む土台のひとつになっていくかもしれません。
参考URL「子どもの自己肯定感・非認知能力が高くなることがわかった"ある体験"とは?(子育て勉強会TERU) - エキスパート - Yahoo!ニュース」を見る
